ところが、3回目の受診の時、治りが遅いと言うのだ。
「今、院長が海外に行って不在だけど、角膜移植をした方がいいと言われるかも知れません。画像を院長の元に、送って見てもらいますね。」
帰って夫に話すと、甘夏は処方食のみの少ない量を食べているので、栄養状態が悪くて治りが悪いのではないかと言った。
そして次の日。眼科専門病院から、電話があってやはり院長が角膜移植をした方がいいと判断したと言う。それで、動物病院のかかりつけ医に甘夏が、もともとの疾患があるので全身麻酔をしてもいいかどうかきいて欲しいと要請があった。
そこで、メールにて問い合わせ、専門医とも電話で話しあって頂いた。
かかりつけ医のメールの返答には、麻酔をかけると生命の保証はできないと、ただし麻酔をして角膜移植しなかった場合、失明するかも知れないと書かれていた。
一時は、これで治ると安心したものの、またもや大きな壁に立ち塞がれることになった。甘夏が失明するかもしれない。もう、それを受け入れよう。生命の危険にさらされるよりましだ。しかしさらに、かかりつけ医が言うには、失明した場合、眼球を取り出すために麻酔が必要になるということだった。
そこまでは、考えられないと思った私は、夫と相談しつつとにかく麻酔をかけないで治す道を探りたいと心に決めた。
左の眼が、痛いんです。おまけに抗生物質のお薬で、下痢ぴーぴーです。
眼よりも生命
片眼を失うことを悲壮な思いで決意して、病院に向かった。こんな可愛いクリクリな眼も、見られなくなるかも知れない。それも覚悟した。
ところがー。
外国で、写真を見た時は、移植手術をしないと難しいと判断したのだけど、実際に先生が診ると、「良好です」というのだ。
あー。良かったー。
このまま、様子を見ることになった。ともかく麻酔はかけられないので、もともと点眼のみの治療しか選択肢はないのだが。『良好』と言う言葉に、安堵した。片眼も失うこともなさそうだ。
考えて見れば、今まで眼科専門の先生からは、失明の言葉を聞いたことはない。
2回ともかかりつけの先生の言葉である。きっと、かかりつけ医の先生は、最悪の場合のことを言うのではないかと思う。最悪を覚悟すると、あとは上がるしかない。
しかし、失明という言葉にはキツイものがある。できれば聞きたくなかった。
先日、公園で、ご夫婦で犬の散歩をしている方々とお話をした。
眼を怪我して、治療をしてる旨を説明した。見た目にはわからなかったのだが、ご夫婦の愛犬は、片眼が白内障のため見えないのだと言う。眼科専門病院のことを、話題にすると「知ってますよ。行ったのだけど、手遅れで…。」と答えが返ってきた。
かかりつけ医は、紹介してくれなかったらしい。
即紹介してくれた甘夏のかかりつけ医に、改めて感謝した。
その後、少しずつ回復して先日ようやくカーラーを外すことが、出来た。
甘夏は、とても嬉しそうだった。まだ、眼には白い跡が残っている。とても深い傷だったので、完全には治らないと言う。
しかし、今回のことを通して、甘夏の体循環門脈シャントの病気のことを改めて考えさせられるきっかけとなった。見た目には、わからないが厳しい食事制限とお薬のおかげで、ようやく生きているのだと実感した。こうして、私は、甘夏の手術を考えるようになったのである。
エリザベスカーラーが、取れるまで2か月以上かかりました。
良かったね。甘夏。